動画を観ていたある日、見慣れない文字が目に入った。
「VR」──そう表示されていた。再生ボタンを押すと、画面が上下左右に動く。
しかも、自分の目線で進んでいく。
まるで自分が登場人物の一人になったような感覚。
これまでの動画とはまるで違う世界だった。
VRといえばゲームの印象が強い。
仮想現実に入り込んで、身体を動かして楽しむあれだ。
傍から見れば変な人に見えるかもしれない。
けれど、体験している本人は完全にその世界に没入している。
気がつけば、俺も“あの世界”を試してみたいと思っていた。
ただ、ひとつ問題がある。
俺は一人暮らしではなく、親と同居している。
動画を観るときもイヤホンをつけ、
親が部屋に入ってこないか気にしながら楽しむ。
VRの場合、完全に視界と聴覚を奪われる。
つまり、もし親が部屋に入っても気づかない。
──それはさすがにマズい。
「それでも試してみたい。」
その気持ちは日々強くなっていった。
現実を忘れて没頭できる時間が欲しかった。
自分だけの世界を作りたいと思った。
そして、ある日決意した。
「そうだ、一人暮らしをしよう。」
一人暮らしなら、誰にも気を遣わずに
自分のペースでVRを楽しめる。
心のままに、映像の中の世界に飛び込める。
その日から、俺の目標は明確になった。
「自分だけの世界を手に入れる」こと。
そして、それが後に“もうひとつの愛の形”へと繋がっていく──。
